茨城原子力協議会の新春賀詞交歓会を開催
1月10日、茨城県内の原子力関連企業や自治体の首長などが新年のあいさつを交わす「茨城原子力協議会新春賀詞交歓会」が水戸市のホテルで開かれました。
この中で、東海第2原子力発電を運営する日本原子力発電は原発周辺の自治体から要求されている、再稼働をする際に事前了解を求める自治体の範囲の拡大について、今ある協定とは別の取り決めで対応したいという考えを示しました。
挨拶に立った橋本知事は、耐震補強工事などに多額の費用がかかることから去年、廃炉が決まった材料試験炉「JMTR」について、「なんとかこれに代わる施設を大洗町に作ってほしいという強い期待を持っている」と述べました。
福島第1原発事故の後、自粛モードであった原子力協議会の交歓会は、東海第2発電所の再稼働や運転延長をめぐる議論が活発になるにつけて、原子力事業者などの思惑で盛大になってきています。「脱原発など派手なことを騒ぐのも政治の世界の常」などと、民進党の衆議院議員が来賓挨拶したのには驚きました。この党のエネルギー政策はどうなっているのだろうかと、強い疑問を感じました。
また、交歓会後、マスコミ関係者の取材に対して、JMTRの代替施設の建設候補地について、施設を所有する日本原子力研究開発機構の児玉敏雄理事長は「国として今後どんな研究が必要か話し合う新たな組織を作り、相談して決めたい」と話していました。
さらに、日本原子力発電の村松衛社長は、東海第2原発を運転再開する場合に、東海村と茨城県に事前了解を得ることなどを定めた「原子力安全協定」をめぐって、自治体側が協定の対象を周辺自治体まで広げるよう求めていることについて、「別の取り決めを結ぶなどして話し合いを持ち、誠意を持って対応することで了解を得たい」と話し、協定そのものを改正して、周辺の自治体にまで事前了解の権限を与えることは難しいという考えを示しました。
福島第1発電所の事故以来、万が一の過酷事故が発生した場合、その影響は立地する市町村だけに止まらないことが明らかになりました。再稼働や運転延長に関わる事前了解は、東海村と茨城県だけではなく、影響が大きい30キロ圏内の市町村に拡大することが望まれます。最低でも、隣接する日立市、常陸太田市、那珂市、ひたちなか市、そして県庁所在地の水戸市の5市を加えることは最低条件です。
「事前了解を含まない別の協定」とは、全く意味のない提案であり、周辺自治体にとってゼロ回答に過ぎません。
東海第二の安全協定見直し、原電が代替案示す、首長懇は受け入れ拒否
東京新聞(2017/1/11)
原電が代替案示す、首長懇は受け入れ拒否
日本原子力発電(原電)東海第二原発(東海村)を巡る原子力安全協定の見直し問題で、昨年十二月の原子力所在地域首長懇談会(座長・山田修東海村長)で原電が、協定は見直さず新たに取り決めを交わし、説明を尽くす案を自治体側に提示していたことが分かった。懇談会側は受け入れを拒否した。水戸市内で十日、開かれた茨城原子力協議会の新春のつどいに出席した原電の村松衛社長が取材に応じ、明らかにした。
安全協定は、原電が東海第二原発の再稼働に必要な安全対策工事などで施設を新・増設する場合、「事前に甲(県)及び乙(東海村)の了解を得る」と定めている。ほかの隣接・周辺自治体は、必要に応じて県や村から意見を求められるのみで、再稼働の事前協議の場には参加できない。
村松社長は「重要な新・増設の設備の変更に伴う安全対策について、事前に説明するようにする」とし、「基本的な安全協定の枠組みは維持しつつ、残ったところ、事前了解に関わる実質的なものについて、別途文書をもって担保させてもらうことでご提案させてもらった」と説明した。協定そのものを改訂する考えはないという。
村松社長は「他の立地県においても、基本的な枠組みは立地と周辺、その他で整備されている」とした上で、原電側の提案を「全国の原発立地自治体の中で最も前に出ているものだった」と強調。懇談会側が「ゼロ回答」と受け止め、提案を突き返したことについて、「何ができるか、引き続き検討していきたい」と話した。
現在、新規制基準の適合審査中の東海第二原発は、来年、法律上の寿命に当たる営業運転開始から四十年が経過する。今秋、再稼働に必要な運転延長の申請のタイムリミットを迎えるが、申請について村松社長は「現段階で最終的には決めていない」と述べるにとどめた。放射線管理区域で白煙
原電は十日、東海第二原発の廃棄物処理棟で七日夜、廃液タンク内の放射性廃液を攪拌(かくはん)するモーターが過熱し、白煙が上がったと発表した。
原電によると、七日午後六時五十五分ごろ、廃棄物処理棟内の放射線管理区域で、警報が鳴り、モーターが自動停止した。駆け付けた職員がモーターから白煙が上がっているのを見つけ、一一九番した。出火はしなかったため、消火作業はしなかったという。
廃棄物処理棟は、東海第二原発で発生した放射性廃棄物を処理・貯蔵する施設。廃液タンク内に不純物が沈着・固着しないよう、モーターで送風機を回して空気を送り込んでいる。
原電は、モーターが過熱した原因を調査中で、原因が特定できるまで、放射性廃液は代替設備で攪拌するとしている。
原子力所在地域首長懇談会 2012年2月、脱原発を掲げる村上達也元東海村長が発起人となってつくった首長組織。原子力安全協定で、周辺自治体の権限や締結自治体の拡大を求めている。東海第二原発が立地する東海と周辺のひたちなか、那珂、日立、常陸太田、原発からおおむね30キロ圏で最も人口が多い水戸の6市村長で構成。