5月13日付けの読売新聞のニュースで、自殺願望を抱く若者らに対し、SNSによる相談対応を今年度以降に実施する自治体が、全国の都道府県・政令市・県庁所在市のうち3割に上ることが報道されています。
このニュースによると、神奈川県座間市の9人殺害事件を受け、若者に身近なSNSの活用が急速に拡大しつつある一方、多くの自治体がノウハウや人手の不足を課題に挙げているということです。
調査は今年4月、都道府県、政令市、県庁所在市の計98自治体に、教育委員会をあわせた実情を聞きました。全自治体が回答しました。
SNS相談には無料通信アプリ「LINEライン」やツイッター、フェイスブックなどで対応する方式や、相談・通報を受けられるアプリを利用する形があります。読売新聞社への回答によると、「実施する予定」としたのは22都道府県と9市の計31自治体。うち少なくとも22自治体は、児童生徒の自殺が多いとされる夏休み明けの今年8、9月を含む時期に行うことをすでに決めています。自殺といじめの相談対応を兼ねる自治体も多くなってきます。この記事によると、茨城県も自殺対策の相談窓口をSNS上に開設する計画です。
SNSは中高生や若者に浸透しています。平成27年の総務省の統計から、10代の若者がどのようなメディアを活用しているかをみてみると、1日平均でSNSの利用が57・8分であるのに対して、メールが17分、ネット電話4・4分、携帯電話2・8分となっており、固定電話に至っては0分と全く利用されていない実態が明らかになっています。若者の自殺相談の窓口にSNSが有効であることは、こうした統計をみれば火も見るよりも明らかです。
長野県が昨年9月に、LINEを利用したいじめ・自殺相談を試行したところ、1日あたり112.7件のアクセスがありました。これは、前年度1年間の電話相談、1日あたり1.8件の62倍の件数となりました。
SNSを活用したいじめや自殺に関する相談窓口は、他のメディアに比べて敷居が非常に低いという特徴があります。さらに、SNSは高い匿名性も確保することが出来、24時間、いつでもどこでも利用できるというメリットもあります。さらに、相談を受ける側も、その受け皿を県内関係者に限定せず、全国の専門家に委託することも可能です。
SNSを利用した相談は、若者に潜んでいる「相談したい気持ち」を掘り起こすことができます。若者の悩みを早期に把握し、解消し、深刻な事態に陥ることを回避することにも繋げられると期待されています。
文部科学省では、いじめ・自殺相談にSNSを活用する方針で、2018年度からの本格実施をめざしています。2017年度補正予算、18年度予算案で計2億5000万円を盛り込み、全国25自治体に相談体制の整備費用を補助します。
文科省によると、SNSの相談窓口では自治体が委託した臨床心理士や教員OBに加え、SNSに詳しい大学生ら若い世代が相談員となります。対象は原則として児童・生徒。受付時間は平日午後5時~10時など、子どもが利用しやすい時間を想定しています。
公明党は、SNSを活用した相談体制の構築を強力に推進しています。
長野県のLINE活用は、公明党長野県本部青年局の提案によるものです。2017年11月には党文科部会が安倍晋三首相に申し入れを行いました。2018年1月の参院代表質問では、山口那津男代表が全国各地に迅速に整備するよう訴えました。