空振りを恐れず、備えを見直す大切な時間に
12月8日夜、青森県東方沖で大きな地震が発生し、青森県八戸市では震度6強、岩手県でも最大70センチの津波が観測されました。北海道から東北にかけて津波警報や注意報が発表され、深夜の不安な時間を過ごした方も多かったと思います。
この地震を受けて、気象庁は「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を初めて公表しました。対象となるのは北海道から東北、関東にかけての7道県・182市町村と広範囲に及びます。これは、巨大地震の予兆を示すものではありませんが、いつもより大きな揺れが続く可能性が少し高まっている状況であることを知らせる情報です。
■なぜ“後発地震”に注意が必要なのか
今回のように、マグニチュード7を超える強い地震が、日本海溝や千島海溝といった巨大地震が懸念されるエリアの近くで起きると、周囲のプレートの力のかかり方が変わり、別の領域に新たな負荷が生まれることがあります。その結果、時間差をおいて次の大きな地震が起きる場合があるのです。
世界の過去の事例をたどると、大きな地震のあとにさらに巨大な地震が続いたケースがいくつか確認されています。頻繁に起きるものではありませんが、一度発生すると被害が甚大になるため、最初の大きな揺れのあとに注意を促す仕組みとして、この後発地震注意情報が導入されています。
■注意情報が出たときの心構え
後発地震注意情報が発表されたからといって、必ず次の大きな地震が起きるわけではありません。むしろ、そのまま何も起きないことのほうが多いとされています。しかし、可能性が普段よりわずかでも高まっている今は、備えを見直す絶好のタイミングだといえます。
私たちは大地震そのものを止めることはできませんが、事前にできる対策を整えておけば、被害を大きく減らすことができます。専門家も、「今できる準備をひとつずつ確認してほしい」と繰り返し呼びかけています。
「日本海溝」と「千島海溝」ではマグニチュード7クラスのあと8や9クラスの巨大地震が発生した事例があります。
直近では、東日本大震災を引き起こした2011年3月11日のマグニチュード9.0の巨大地震です。2日前にマグニチュード7.3の地震が発生しています。
また、1963年には択捉島南東沖を震源とするマグニチュード7.0の地震があり、その18時間後にマグニチュード8.5の後発地震が起きました。
このため気象庁は、マグニチュード7クラスの地震のあと、巨大地震が発生する確率が高まっているおそれがあるとして、最初の地震発生から2時間後をめどに内閣府と合同で記者会見を開き、情報を発表します。
巨大地震につながるのは1/100程度。国は「情報が出されたからといって、必ず巨大地震が起きるとは限らない」としています。一方、情報の発表は2年に1回程度と頻繁になるということです。
世界的な統計では、マグニチュード7クラスの地震のあとに8クラスの巨大地震が起きるのは100回のうち1回程度、9クラスになるとさらに低いとされています。
一方、国のこれまでの説明では、過去の地震の履歴から後発地震注意情報は2年に1回程度と頻繁に発表される見込みです。
国の専門家による検討会の報告でも「情報は空振りとなる可能性が高い」としています。
情報が出される前に突然、津波を伴う巨大地震が発生することや、先発の地震から1週間をすぎてから規模の大きな地震が起きることもあり、日頃からの備えが大切です。
■今日からできる、具体的な備え
この一週間ほどは、次のような行動を心がけておくと安心です。
●車のガソリンを満タンにする
停電や交通混乱で給油できなくなる可能性があります。
●現金を多めに確保しておく
ATMやキャッシュレスが使えない場合に備え、小額紙幣を中心に手元に置いておきましょう。
●マイナンバーカード・通帳・保険証などを一式まとめておく
避難時に探し回る時間をなくすため、“持ち出しセット”を一つ作っておくのがポイントです。
●携帯バッテリーはすべて満充電に
情報収集と安否確認には電源が欠かせません。
●家具の転倒防止・安全確認
寝室のレイアウト、ガラスの飛散防止、非常食や水の備蓄確認など、家の安全を一度見直してみてください。
■恐れるためではなく、守るための情報
後発地震注意情報は、「大きな地震に気をつけてください」という警告ではなく、「いま一度備えを整えましょう」という前向きな呼びかけです。不安を大きくするためではなく、備えを促すために発表される情報だという点を大切に受け止めたいと思います。
どうか今日できることを、ひとつでも進めてみてください。
大きな災害はいつ起きるか分かりませんが、備えは必ず私たちを守ってくれます。
