
「カン-denchi」――関西電力グループとデベロップの挑戦
太陽光や風力など、再生可能エネルギーの導入が急速に進むなかで、電力の「つくる」と「使う」をつなぐ“調整力”の重要性が日増しに高まっています。特に、天候に左右される再エネの不安定さを補完し、安定した電力供給を実現するには、電気を「ためて使う」ための仕組みが不可欠です。
このような背景のもと、関西電力は2025年5月28日、蓄電所の開発から運用までを一貫して支援する新サービス「カン-denchi(カンデンチ)」を発表しました。蓄電施設の開発を検討する企業や自治体に向けて、用地選定から設計、資材調達、施工、保守・管理、さらには市場取引に至るまで、関西電力グループの総力をあげてサポートする、まさに「電力版ワンストップサービス」です。
このプロジェクトにおいて、蓄電施設の開発パートナーとして参画したのが株式会社デベロップです。デベロップは、全国で3500室以上のコンテナホテルを展開する事業者として注目されています。かつてトランクルームの屋根に太陽光パネルを設置する小規模な発電事業からスタートし、現在では全国で約1,200か所もの発電所を手がける再エネ事業者へと成長しました。FIT(固定価格買取制度)に依存せず、Non-FIT型電源や蓄電池の活用、さらにはリパワリング(設備更新)の提案など、制度や法改正に対応した柔軟な事業戦略を展開しています。
このような再エネの実績と機動力を活かして、デベロップは「カン-denchi」においても、蓄電施設の開発を担当。関西電力グループと協力し、地域の遊休地を活かした蓄電所事業を全国で展開していく予定です。

そもそも、系統用蓄電池は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて不可欠な存在です。2030年のエネルギーミックス達成に向けても、再エネ導入のさらなる拡大が求められており、国や自治体はその実現手段として、系統用蓄電池の普及を積極的に推進しています。
再エネの出力は天候によって大きく変動し、余剰電力が発生する場合もあれば、電力不足に陥る場合もあります。こうした「再エネの不安定性」という課題を解決する手段として、電力を貯めることのできる蓄電池の役割が注目されているのです。蓄電池は、昼間の余剰電力をため、需要が高まる夕方以降に放電するなど、需給バランスの調整に貢献します。世界各国で系統用蓄電池の導入が加速しているのも、その有効性が評価されているからにほかなりません。
さらに、近年では企業の参入も活発化しています。背景には、脱炭素社会の実現に貢献できるという社会的意義だけでなく、2022年5月の電気事業法改正によって、蓄電池を活用した電力市場取引が正式に解禁されたことが大きな要因です。電力の価格が安い時間帯に電気を買って蓄電池にため、高い時間帯に売るという、いわゆる「アービトラージ取引」によって利益を得ることが可能になったのです。これは、系統用蓄電池ならではの大きなビジネスチャンスであり、今後の収益源としても大きく期待されています。
こうした背景を受け、国による補助金制度も強化されており、今後はますます系統用蓄電池市場の拡大が見込まれます。「電力はその場で消費するもの」から「貯めて価値を生むもの」へ――電力の役割そのものが、いま大きく変わろうとしています。
「カン-denchi」と、蓄電施設の実務を担うデベロップの連携は、まさにこの新たな電力インフラ時代を象徴する取り組みと言えるでしょう。電力の安定供給とカーボンニュートラルの両立という、難しい課題に対して現実的な解を示すこのプロジェクトに、今後も大いに注目していきたいと思います。





