経常収支比率は過去最高の90.6%:財政硬直化進む
10月2日、茨城県は県内市町村の平成18年度決算が、9月議会で承認されたことを受けて、決算の概要を取りまとめ公表しました。
それによると、平成18年度の市町村の財政状況は、前年度に引き続き依然として厳しい状況にあり、財政構造の硬直化が進んでいます。財政構造の弾力性を示す経常収支比率は、扶助費(生活保護費や医療助成費など)の増などにより、0.4ポイント増の90.6%で過去最高となりました。
一部事務組合(消防や上下水道など)の公債費(市町村の借金の返済額)に対する負担金、公営企業の元利償還金に対する繰出金などを実質的な公債費として捉えた実質公債費比率は0.4ポイント増の15.0%となっています。
義務的経費は、主に生活保護等に係る扶助費の増加(+8.2%)により、1.7%の増となっています。また、退職金については2.6%増加していますが、人件費それ自体は1.1%の減となっています。
地方債現在高(市町村の借金残高)は、平成16年度をピークに減少に転じており9,918億円(△1.2%)と1兆円を下回りました。また、将来にわたる実質的な財政負担は9,374億円(△3.1%)と減少に転じました。(将来にわたる実質的な財政負担とは、後年度の支出につながる地方債現在高及び債務負担行為の支出予定額から積立金現在高を差し引いた額です)
投資的経費の大部分を占める普通建設事業費(公共事業費)は、2.4%減少しています。これは特に市町村の単独公共事業費の抑制による減少(△6.9%)が主な要因です。普通建設事業費は、ピークである平成5年度の約4割の水準となっています。
各市町村においては、人件費などの固定費の削減に努め、公共事業を削って懸命な財政健全化の努力が行われています。しかし、地方財政の状況は依然として回復の兆しを見せず、より一層の財政健全化の取組を進めていく必要があります。
参考:平成18年度市町村普通会計決算の概要について
06年度県内市町村決算 経常収支比率0.4ポイント悪化
茨城新聞(2007/10/03)
財政硬直、事業手控え
県が10月2日に発表した県内44市町村の2006年度普通会計決算で、財政構造の弾力性を示す経常収支比率が平均で90.6%となり、前年度から0.4ポイント悪化して過去最高となったことが分かった。財政の硬直化に歯止めがかからず、経常的収入の九割以上を人件費など義務的経費に充てている状況。このため、投資的経費は前年度比で2.3%減少しており、事業をできるだけ手控える市町村の委縮傾向を浮き彫りにしている。
「要注意」30市町
経常収支比率は退職金を含む人件費や扶助費(児童福祉費や生活保護費など)、公債費(借金返済費)が一般財源に占める割合を示し、90%が自治体財政の「要注意」ラインとされる。県内平均は04年度まで全国平均を下回り80%台にとどまっていたが、05年度には90.2%となり全国平均を0.7ポイント上回った。
44市町村のうち経常収支比率が90%以上となったのは30市町。このうち、筑西市99.8%、利根町99.0%、つくばみらい市97.5%など8市町が95%を超えた。神栖市、東海村、鹿嶋市は70%台だった。
44市町村全体の決算規模は歳入が9758億円、歳出は9378億円で、ともに前年度比0.4%マイナス。歳入から歳出と翌年度への繰り越し財源を差し引いた実質収支は全市町村とも黒字決算となった。
歳入は、地方税が市町村民税・法人税の大幅増などで3.8%増加したが、地方交付税は5.1%減で、実質的交付税とされる臨時財政対策債を合わせると6.6%減となった。前年度比では地方譲与税36.8%増、地方債0.6%増、繰入金39.0%減、地方特例交付金17.9%減などとなった。
歳出は、扶助費などの増で義務的経費が1.7%、積立金が21.7%増加する一方、普通建設事業費の減で投資的経費が2.3%減少した。義務的経費では、過去に発行した地方債償還で公債費が0.8%増加したが、人件費は給与削減などで1.1%減。投資的経費では、特に市町村単独の建設事業費が6.9%減少した。
普通建設事業費は1202億円で10年連続の減少となりピーク時の93年の約4割。事業を抑え、財政調整基金など翌年度以降への積立金を増やす緊縮傾向から、将来にわたる実質的財政負担は3.1%減少し、地方債残高も03年度以来1兆円を切って減少傾向に転じている。