3月5日の茨城県議会一般質問は、いばらき自民党の2人の県議が東海第二発電所の再稼働や原子力安全対策に触れ、興味深い議論が知事との間で交わされました。
地元東海村選出の県議は、札幌医科大学の高田純教授の「福島の甲状腺被曝はチェルノブイリのおよそ1000分の1であり、福島県民に福島第1原発由来の甲状腺がんは発生しない」との学会での発言を紹介。さらに、昨年実施された福島県民の健康診断結果報告を元に、「様々な調査結果において、福島県民に健康被害はないと結論づけられている」と強調しました。
その上で、「福島県の況状を踏まえれば、茨城県においても福島第1原発事故による放射線の影響は既に少ないと考えます」と述べました。さらに「事故から2年が経とうとする今、そそろそろ、放射線が健康に与える影響は極めて安全なレベルであるという『安全宣言』のような明確で分かりやすいメッセージを、知事が県民に向けて発信すべきではないか」と発言しました。
福島第1原発の事故も終息していません。県内各地では、国が定めた0.23μSv/hを超える空間線量が観測される場所も数多く存在しています。まして、低レベルの放射線の人体への影響に関して定まった学説もない中では、いささか唐突な発言であったと思います。
この質問に対して、知事は「放射性ヨウ素についての線量評価は、まだ中間報告の段階であり、来年度さらに精度を高めるべく継続して調査すると聞いております。また、未だに魚の一部など特定の食品から基準を超える放射能が検出されており、除染についても継続して実施されている状況の中では、安全であるとのメッセージは、県民の理解は得られないと考えます」と答弁し、県民の健康に関する放射線の影響については、慎重に検証していく姿勢を明らかにしました。
一方、水戸市選出の県議の東海第2原発に関する質問は、「原発の安全と安心」という視点から傾聴に値いするものでした。
この県議は、「(東海第2発電所の)再稼動の条件は、安全の確保、地元住民の合意が得られることだと思っています。ただ、(知事の考えと)違う所があるとするならば、私は県民の安心感をが得られるということが一番大 なことだと思います。国の安全基準をクリアしたことイコール安心とは言いがたく、原発イコール危険かもしれないというイメージを払拭することは難いと思います」と指摘しました。
茨城の発展に、原子力発電は大きな貢献を果たしました。しかし、国が厳しい再稼動の条件を示し、事業者がそれをクリアし、なおかつ、万が一の事故に対する避難対策が確立したとしても、県民の安心感は得られないのではないかとの疑問があります。30キロ圏内に100万人の人口を有し、その中に県都水戸を含む茨城県にあっては、原発が存在しない安心感を与えた方が、県民には大きなメリットがあるとの主張にも聞こえました。確かに、茨城への企業誘致にとって原発があることより、原発がない事の方が優利に働くのではないでしょうか?茨城の保守層にも、こうした見方が広まって来ていることは要注目です。
茨城の百年後を見捉えた、東海第2原発の議論が望まれます。