厚生労働省は、経済的に困窮している家庭の子どもに対し、自治体が実施している学習支援事業の対象を広げ、現在の小中学生に、高校中退者や進学していない中学卒業者も加える方針を決めました。
学習支援事業は、公明党の推進で成立した生活困窮者自立支援法に基づき、2015年にスタートした制度です。高校進学の後押しが主な目的で、ボランティアや元教員らが、公共施設などで勉強を教えたり、家庭や学校に居場所がない子どもの相談に乗っています。国は自治体が行う事業費の半分を助成しています。
茨城県では18市(水戸市、日立市、土浦市、古河市、石岡市、結城市、龍ヶ崎市、常総市、常陸太田市、高萩市、北茨城市、笠間市、取手市、ひたちなか市、常陸大宮市,筑西市,稲敷市,かすみがうら市)が、国の助成を受けて学習支援事業を行っています。茨城町、大洗町、城里町、大子町、美浦村、阿見町、八千代町、境町、利根町の8町村では、県が学習支援事業を展開しています。
経済的理由による教育格差が次世代にも引き継がれる“貧困の連鎖”を断ち切る上で、学習支援事業には大きな役割が期待されています。しかし、年間5万人弱に上る高校中退者や、中学を卒業しても家庭の事情などで進学できなかった約1万人の生徒は対象外になっていました。
この中には、生活困窮世帯が少なくありません。こうした子どもたちの置かれた環境は厳しいものがあります。例えば、ハローワークに行っても高卒者用の求人には応募できず、中卒者に対する求人はほとんどありません。
“貧困の連鎖”を防ぐためにも、高校中退者や中卒者の高校への復学、進学を後押しすることは重要です。この点に、学習支援事業の対象を広げる狙いがあることは言うまでもありません。
しかし、単なる学習支援でけでは不十分です。例えば高校中退者の場合、中退した理由として「授業に興味がわかない」「人間関係でつまずいた」など、学校生活になじめなかったことを挙げるケースが多くあります。高校中退者への学習支援を行う都内のNPO法人では「人間関係でつまずいた子どもには人間関係の形成から、また、学力不足なら基礎学力が向上するように指導する」と、学力向上に限らず、生活習慣を含めた支援の重要性を訴えています。こうした現場の声を生かす視点が求められます。
子どもたち一人一人に寄り添い、その可能性を開き、将来の選択肢が広がるような取り組みにすべきであることを、改めて確認したいと思います。