
9月11日、公明党が第27回参議院議員選挙の総括を公表しました。
擁立22名のうち19名が当選した一方で、比例区の得票減や与党全体の過半数割れなど、痛みを正面から受け止めた内容でした。方面別懇談会で寄せられた現場の声として、「公明党らしさ」の訴求力不足、党活動に幅広く参加いただく仕組みの弱さ、そして組織の“地力”をどう底上げするかといった課題が、率直に書き込まれていたのが印象的です。
現状認識を「党存亡の危機」とまで位置づけ、ブランディングや広報宣伝体制の抜本的再編、「サポーター制度(仮称)」や「党学生部」の創設など、次に踏み出すべき方向性も示されました。来たる大型選挙に向けたアクションプランを、立党精神の再確認と結び付けていく姿勢は、国民の安心と希望を取り戻すために不可欠だと感じます。
現状認識と敗因
●自民支持層・無党派層からの信任不足
●40~50代現役世代、10~30代若年層で支持伸び悩み
●与党への逆風と世界的な多党化が日本でも本格化
●既存政党・政治手法への国民の拒否感(自民党の不記載議員への推薦など)
●軽減税率は適切な結論を得るも、政策調整の遅延による影響否めず→「党存亡の危機」と位置付け
今後の党改革の方向性
①ブランディング・広報宣伝体制の抜本的再編
②「サポーター制度(仮称)」「党学生部」の創設
③「責任ある中道改革勢力」の軸として役割果たす
私は、議員OBとしてこの総括に異論を唱えるつもりはありません。多くの点で、耳の痛い課題をよくここまで書いたと評価します。そのうえで、あえて一つだけ補足したい視点があります。総括は参院選の検証ですから、衆院の小選挙区戦術に踏み込んでいないのは理解します。
しかし、今日の「公明党らしさ」を弱めてきた主因の一つが、衆院小選挙区における他党との協力・連携・取引の積み重ねにあることは、やはり議論から外せないのではないでしょうか。選挙区対応に過大な資源を傾注する体質が固定化すると、政策形成や国会内での交渉力、さらには党全体のメッセージ発信が後景に退きます。党の顔である幹部が小選挙区や大選挙区を抱え、地元事情に忙殺される構図は、国家的課題に腰を据えて向き合う時間とエネルギーを確実に食い潰していきます。石井啓一前代表をはじめ、斎藤鉄夫代表、西田実仁幹事長のような要の人物を、地域の厳しい選挙区戦に縛り付けることが最善かどうか。ここは、勝ち筋だけでなく党の存在意義から逆算して再設計すべき論点だと考えます。
もう一つ、大切にしたいのは地方の基盤づくりです。主要都市での多人数擁立によって議席数を“見かけ上”積み増すよりも、全国の市町村に一人ずつでも公明党議員を置く――この“面の戦略”こそが、公明党の生命線であり「公明党らしさ」の源泉だと、私は確信しています。防災、子育て、福祉、教育、デジタル行政といった生活密着の課題は、市区町村の現場で兆しが生まれ、悩みが集まり、解決の糸口もまた現場から立ち上がります。地域の声を丁寧に拾い上げ、都道府県や国の政策に橋渡しする“毛細血管”のような役割を担うのが、まさに地方議員の仕事です。幸い、茨城県では44の全市町村に公明党の議員がいて、地域の課題を確かな言葉に変え、県政・国政に届ける循環が息づいています。この手触りのあるネットワークを全国に広げ、「空白自治体をつくらない」ことを明確なKPIに据える――それが、比例の物語性を取り戻し、党全体の信頼を再構築する近道ではないでしょうか。
総括が掲げるブランディング再編やサポーター制度、学生部の立ち上げは、いずれも前向きな提案です。ただ、制度や看板だけでは血は通いません。鍵は、日々の暮らしの現場に立つ地方議員の活動を主役に据え、国会・政府と双方向で回路をつくることです。たとえば、地方発の政策起案を定期的に中央へ吸い上げる公式の“現場会議”を制度化し、成果が国の制度・予算につながった案件を可視化する。地域の住民や専門家、若い世代が気軽に参画できる小さな対話の場を、党として各地に常設し、そこをサポーター制度の“入口”にする。そうした地道な仕組みづくりが、結果として国政選挙の説得力あるメッセージに結晶していくのだと思います。
「党存亡の危機」という厳しい言葉は、危機を看板にして結束を迫るスローガンではなく、構造を改めるための自省の号砲であるべきです。
現場を主戦場に据え直し、空白を埋め、幹部は国家課題に専念できる布陣に改める。公明党の強みである生活者目線と対話の力をもう一度前面に押し出せば、比例の一票にも、若い世代の支持にも、確かな理由と希望が宿ります。立党精神に立ち返りながら、次の一歩を現場から積み上げていきたい――その思いを、今回の総括への私なりの思いをとどめます。