基準の3万3000倍のヒ素を検出
1月14日、環境省は旧日本軍の毒ガスに関する専門家検討会を開催し、神栖町の井戸水汚染問題について、調査経過を報告しました。それによると、環境基準値の約3万3000倍という高濃度の有機ヒ素化合物「ジフェニルアルシン酸(DPAA)」を含むコンクリート状の大きな塊が、掘削調査で発見されました。
環境省は「形や硬さが不均一で、セメントを適当に流し込んだ状態に近い」とみて過去の埋め立て状況なども調査します。「塊が汚染源とは断定できない」としているが、塊の内部や下側に汚染源がある可能性が高いとみて、慎重に調査を進める方針です。
また、有機ヒ素化合物については「旧日本軍が使用した以外あまり使われない物質」とし、軍由来の可能性が残るとの見方を示しました。
この掘削調査は、井戸水を飲用していた住民に健康被害が出た井戸から南東に約90メートル離れた場所を、縦12メートル、横24メートルにわたって掘削しました。1月7日、深さ約2メートルまで掘り進んだ場所に、縦約2メートル、横4メートル、厚さ10センチ程度のセメント塊を発見しました。石灰や石が混じり、比較的新しい木のくいが刺さった状態です。
発見されたコンクリート塊は、水たまりのような形で固まり、地面にぶちまけられた後に固まったようにも見えるといいます。縦約15メートル、横8メートル、深さは1メートル以上あるとみられ、一部が二層構造になっており、地下水の流出も始まっていることから掘削作業は難航しています。
国立環境研究所などで分析したところ、コンクリートからは水質基準の約2000倍、周辺の土壌からは最高で3300倍、コンクリートに含まれていた米粒大の白い結晶からは約3万3000倍のDPAAが検出されました。
環境省によると、発見場所は1991~93年ごろまで釣り堀用の養魚場として使われており、その後埋め立てられました。
環境省毒ガス弾総合調査検討会によると、白い結晶はDPAAを含む地下水が蒸発する際にできた可能性もあり、また、コンクリートと汚染物質を混ぜて固めたことも考えられます。
参考:神栖町における有機ヒ素汚染源調査についてのお知らせ
神栖町の掘削調査現場の地図にリンク
10数年前の埋設?不法投棄の可能性も
一方、このコンクリート塊が、旧日本軍が遺棄した毒ガス兵器由来の物質ではないとの見方も広まっています。産経新聞茨城版1月15日付けでは、不法投棄説が論究されています。
神栖の有機ヒ素問題 汚染源?コンクリ塊発見
十数年前埋設か“旧軍遺棄”の可能性低下
産経新聞茨城版(2005/1/15)
塊は土に穴を掘ってそこにコンクリートを流し込んだような形状で、流し込んだ際に有機ヒ素を混ぜ込んだとみられる。また、コンクリート塊のそばから腐食していない真新しい木のくいが見つかり、環境省の担当官は「コンクリート塊はここ十数年の間に埋められた可能性が高い」としている。
有機ヒ素は当初、旧日本軍の化学兵器の「くしゃみ剤」が地中に投棄され、その成分であるジフェニルシアノアルシンなどが変化したものとみられていた。しかし、コンクリート塊に含まれていたのはジフェニルアルシン酸そのものだったため、従来の見方への疑問が強まった。
地質汚染の専門家は「終戦後、旧軍の化学兵器は肥料などに転用できるため大量に民間に払い下げした。払い下げられた化学物質の転用に失敗した業者が持て余して不法に投棄したのではないか」と推測する。
こうした状況を受け、環境省は、1月20日(木)に地元説明会を開催することになりました。
1. 日付 平成17年1月20日(木)
2. 対象者・時間・場所
(1) 対象者 神栖町住民
(2) 時間 18時30分 ~ 20時00分
(3) 場所 神栖町保健・福祉会館(神栖町溝口1746-1 )
3. 説明内容
神栖町における有機ヒ素化合物(ジフェニルアルシン酸)に係る汚染源の掘削調査の現状及び今後の予定等について
(なお、説明終了後、質疑応答も行う予定です。)
4. 報道取材
・ 説明会は公開で行います。
・ 取材をご希望される場合は、下記担当あてに1月18日(火)までに登録をお願いします。
・ なお、当日18時00分から神栖町保健・福祉会館入口にて受付を行い、 資料を配付します。
連絡先: 環境省 総合環境政策局 環境保健部 環境安全課
環境リスク評価室 担当:関井、武藤
〒 100-8975 東京都千代田区霞が関1丁目2番2号
TEL : 03-3581-3351(内線6344)
FAX : 03-3581-3578