民主党の小沢一郎代表は、10月9日発売の月刊誌「世界」で論文を発表し、「国連の活動に積極的に参加することは、たとえ結果的に武力の行使を含むものでもむしろ憲法の理念に合致する」としたうえで「政権を取ったらアフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)への参加を実現したい。スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に参加すべきだ」と改めて主張していることが分かりました。
ISAFとは、アフガニスタンの治安維持を支援する多国籍部隊です。国連安全保障理事会の決議により、2001年12月に派遣されました。指揮権は03年8月から北大西洋条約機構(NATO)軍にあります。現在、アフガン北部と西部に約1万人が展開していますが、2005年12月のNATO外相理事会で、約6000人の増派を伴う南部への新たな展開計画が承認されました。
このISAFは明らかに国連決議に則っているといっても、NATO軍の指揮下で武力行使への参加と言うことになります。集団的自衛権や海外での武力行使を認めない憲法に抵触することは明かです。そもそも、すべてが戦闘地域の状態に陥っているアフガニスタンでの地上活動を自衛隊に認めること自体、憲法違反です。
インド洋での海上補給活動がだめで、アフガンの地上戦闘支援が良いという小沢代表の主張は、果たして民主党内でも総意が確認されているのでしょうか?
(写真は、ISAFに参加したNATO軍の兵士、カブール付近で、NATO提供)
テロ対策新法:「地上軍へ参加」民主・小沢氏提案波紋 「対案なき」原則論
毎日新聞(2007/10/8)
海上自衛隊のインド洋での給油を継続するための「新テロ対策特別措置法」をめぐり、民主党・小沢一郎代表の新たな主張が波紋を広げている。
「安全な活動」とされる給油に反対しながら、憲法が禁じる海外での武力行使につながりかねないアフガニスタンでの地上軍(国際治安支援部隊、ISAF)に自衛隊が参加すべきだと言い出したからだ。真意は何か。なぜ今か。9日から始まる衆院予算委員会の与野党論戦では、政府新法と並ぶ焦点になりそうだ。
■一度は「民生」
「武力行使は憲法からして認められない。参加するのなら、武器使用権限をきちんと言ってもらう。自衛官の命を軽んずるな」。石破茂防衛相は7日、テレビ朝日の番組で、小沢氏の主張を強い調子で批判した。
これに対し、菅直人代表代行は同日のフジテレビの番組で「ISAFにはいろんなものがある。武力攻撃には自衛隊は出せないが、人道支援などでやれる範囲が一切ないとは思わない」と小沢氏を擁護。石破氏が伝統的護憲論、菅氏が積極的海外派遣論を展開する「ねじれ」た光景となった。
小沢氏の地上軍参加論は、党内論議もないまま先週、唐突に明らかになった。兆候はあった。
8月8日、シーファー駐日米大使が説得のため民主党本部を訪問。小沢氏は会談で、自分からISAFを話題に持ち出し「(民主党が政権にいれば)国連にオーソライズされた活動に参加したい」との意欲を語った。
小沢氏が給油に反対する理由は「前提となる国連決議がない」という原則論。ところが、ISAFは国連決議がある。小沢氏の「国連決議至上主義」の論理に基づけば、地上軍参加は「武力行使を含んでも憲法に抵触しない」という理屈だ。
この急進的な小沢論法に民主党内は動揺。旧社会党グループの横路孝弘衆院副議長は、現地の実情を説明させるため、アフガンで民生支援にあたるNGO「ペシャワール会」の中村哲・現地代表を小沢氏に紹介。小沢氏は8月20日に中村氏と会った。中村氏は「軍隊を派遣して金を使うより民生支援だ」と強調。以後、小沢氏も「テロとの戦いは民生支援こそ必要」と繰り返し、いったんは民生支援重視に傾いた。
■「新法」で一転
ところが政府・与党が今月2日、思いの外早く「新法」骨子案をまとめ、野党に示す動きを見せると、小沢氏は一転、原則論に戻り、5日付党機関紙で再び地上軍参加論を持ち出した。
新法づくり段階から民主党の考えを取り入れようと柔軟姿勢をアピールする政府・与党に対し、民主党が対案も示さず、話し合いを拒み続ければ、世論の支持も失いかねない。9日発売の月刊誌では「代案がない反対は責任放棄」という批判への反論として主張を展開している。
憲法論議にまで踏み込む地上軍参加論には、政府・与党との話し合いの余地は事実上ない。小沢氏の本音は対案提示ではなく、原理原則で政府・与党の「話し合い路線」を拒否することにあるとみられ、政局的な発想に尽きている。
■現実案はなく
一方、党内向けには「政権を取ったら」という前提付きで、今すぐ実行する政策でないという点がミソ。だが現実的対案がなければ国会論戦で窮地に追い込まれる危険もある。党幹部らが模索するのが、地方復興チーム(PRT)への関与だ。
ただ現実論に近づけば政府・与党につけいるすきを与えるだけではなく、安全保障でまとまりを欠く党内が混乱する危険性も高まる。対案作成は見送り、小沢氏の原則論のみで国会を乗り切らざるをえなくなる可能性もある。
日本でのテロの可能性を減らしたいなら、まず米国主導の作戦(OEF)から抜けることです。日本が標的に指定されたのは、特措法が成立したすぐ後というのをご存じですか?
ISAFは1386でオーサライズされている国際治安維持活動で、タリバンと戦うための組織ではありません。犠牲者がでる可能性はありますが、正当防衛的武器使用も違憲と仰るなら、現行の国際平和協力法も違憲ということになります。
ちなみに決議1368は、海上阻止行動(OEF)とは関係有りません。米国の戦争に参加する有志国の行動を、国連がオーサライズするわけがありません。
給油活動という名の有志軍「兵站」参加で、日本は現在戦争中であるということをまずご理解ください。新聞の情報は議論の参考にはなりません。参考まで。