民主党の小沢代表の去就をめぐって混乱が続いている国会では、衆院テロ防止・イラク支援特別委員会が、11月5日に開かれ、海上自衛隊によるインド洋での補給活動を再開するための補給支援特別措置法案で参考人質疑が行われました。
この日参考人として意見を延べたのは拓殖大学大学院教授森本敏氏と軍事アナリストの小川和久氏。森本氏は、「いったん退いた(海自の)活動を速やかに再開させるべき」と述べて、自衛隊派遣の恒久法については「新法を成立させてから、与野党協議に入るのが望ましい姿だ」と語りました。また、小川氏は「パキスタンの不安定な政情はテロ克服のための取り組みから無視できない要素だ」と述べ、これまでの両国の友好関係を基にして、できることを検討すべきとの考えを示しました。
テロ対策など国益に直結
拓殖大学大学院教授 森本敏氏
(2007/11/5衆議院テロ防止・イラク支援特別委員会参考人質疑)
いま審議されている補給支援特別措置法案は、日本の国益、将来を決める重要なものだ。
日本は資源、食料の多くを海外に依存し、対外的な経済依存度が極めて高い国であるため、国際社会の平和と安定が重要な意味を持っている。つまり、日本ほど国際社会の平和と安定のために積極的に貢献しなければならない国はないのだ。
「9・11」の米国同時多発テロ以来、アフガニスタンでは「不朽の自由作戦(OEF)」、国際治安支援部隊(ISAF)などの活動に40カ国もの国が参加し、国際テロ対策と治安維持に取り組んでいる。インド洋上での海上阻止活動(OEF―MIO)は、テロの拡散を防止する非常に大切な活動であり、日本はテロ対策特別措置法に基づいて海上自衛隊を派遣し、補給支援活動を行ってきた。これは、国際テロ対策、日米同盟、シーレーン(海上交通路)防衛など日本の国益に直結する活動だ。新法を成立させ、できるだけ速やかに海自の活動を再開させることが、わが国の国益に適うと考える。
ただ、日本はできれば、陸上での活動を行うことも検討すべきだ。それには、民主党が対案を示した上で、与野党が協議をすることが必要だ。また、政府開発援助(ODA)などの支援だけで、海自による支援の再開の必要がないとする主張は、議論にならない。
海自の給油再開 平和主義の真贋問われる
軍事アナリスト 小川和久氏
(2007/11/5衆議院テロ防止・イラク支援特別委員会参考人質疑)
新しい特措法(補給支援法案)を成立させ、早急な給油再開を求める。そして、テロ克服への本格的な取り組みを審議してもらいたい。
テロ克服には、国家の原理原則と国益の観点から取り組むべきだ。原理原則とは、憲法前文の精神の通り、世界平和の実現を誓うのにふさわしい行動である。
アルカイダなど(テロ組織)は文明国を標的にする傾向がある。その中で脆弱な日本は、標的の上位にあることを前提に、封じ込めを図ることが国益上、最も重要な点だ。また、経済立国である日本は、世界が平和でなければ繁栄はない。従って「安全なくして繁栄なし」の順序で考える必要がある。
テロとの戦いは米国支援でない。同時多発テロは、日本の平和主義への重大な挑戦だ。テロリストと大量破壊兵器の開発国の結合は、日本にとって深刻な脅威となる。日本は国際社会と共同して、当事者として行動すべきである。
自衛隊派遣は、国際平和協力活動や、集団安全保障として考えて取り組むのが自然である。
日本の議論は、自衛隊派遣かアフガンの民生支援か二者択一になっているが、安全な状態を生み出し、その後に医療など民生支援が行われることを知らなければならない。日本の平和主義の真贋が問われている。