日本の農業を巡る様々な問題の中でも、耕作放棄地が広がっている問題は特に深刻です。その対策の一つとして注目されているのが、市民農園等の農地の貸出し制度の推進です。
2003年に特定農地貸付法が改正され、これまで市民農園は市町村と農協しか開設できませんでしたが、市町村と協定を結べば農家や企業、NPO法人も運営できるように規制緩和されました。栽培した作物も販売できるようになりました。
耕作ができなくなった農家にとって、先祖から受け継いだ農地を売却することは非常に抵抗があり、農地がそのまま放置される結果となっています。また、農地を売ったり、宅地にしたりすると高額の税金がかかります。しかし、市民農園として貸し出せば、農地扱いで税制面でも優遇され、土地を手放さずに済みます。
茨城県の取りまとめによると、特定農地貸付法に基づく茨城県内の市民農園数は2004年の51箇所から、2007年は70件に増えています。
こうした流れを受けて県は、11月につくば市で市民農園開設支援研修会を開催しました。農家やNPO関係者ら約130人が参加し、関心の高さをうかがわせました。各市町村や県地方総合事務所、県農村環境課で相談を受け付けていいます。
以下県内の市民農園の取り組みを茨城新聞(2007/12/7付け)より抜粋します。
市民農園業に熱視線
茨城新聞(2007/12/7)
■一躍、ビジネスに
TX研究学園駅から程近い「ファミリー農園inつくば」(つくば市)は昨年夏にオープンした。年間利用料は一区画(約30平方メートル)9600円。
開設した谷口企画(同市)の谷口米二社長は、都内の大手家電販売会社の役員を辞め、この道に入った。まず、土地▽水▽駐車場▽指導員-確保を優先した。
会員集めにも奔走。谷口さんは「オープンまでの二カ月間は、チラシのポスティングによるPRを徹底した」と話し、会員約210人に成長させた。「最初はほかの農園を見て研究することが重要。その気になれば、ビジネスとしても成り立つ世界」と指摘する。
■余暇活動の拠点に
NPO活動の一環として「とまと倶楽部」(日立市)が設立されたのは2005年春。同年夏に市の支援事業に採択された。計28区画で、一区画(約20平方メートル)の年間利用料は9600円。
設立の経緯について、代表の田尻英美子さんは「地域の企業をリタイアした団塊世代の農業ニーズに応えたかった」と話す。野菜直売や自然薯(じねんじょ)オーナー制のほか、交流事業、生ごみ堆肥(たいひ)の活用などを展開。余暇活動の拠点となっている。
■滞在型の人気要因
TXみらい平駅周辺の住民増加に伴い、つくばみらい市は「小張市民農園」を2007年春に開設した。計28区画で一区画(約30平方メートル)の年間利用料は5000円。空きはないという。
近所に移住した竹内満治さんは都内に通勤しながら同園の利用を始めた。「現在は退職し、晴耕雨読の日々。仲間との会話も楽しい」と話す。野菜作りを指導する山口進司さんは「収穫の喜びを聞くとこちらもうれしい」と笑顔を見せる。
市民農園には大規模な滞在型もある。笠間クラインガルテン(笠間市)は都市住民から人気だ。市によると、4月現在の都県別利用者は①東京22組②千葉10組③神奈川9組④埼玉7組⑤茨城2組-となっている。
人気の要因について、市の青木繁産業経済部長は、首都圏100キロ圏内▽里山がある▽芸術・文化があるため-と分析。「利用期間後、市内に移住したり、移住を検討したりする人も出てきた」と話す。
参考:ファミリー農園 in つくば 情報交換ブログ
参考:ふれあい貸し農園トマト倶楽部
参考:笠間クラインガルテン
参考:茨城県内市民農園ガイド(茨城県都市農村交流協議会)