5月12日、井手よしひろ県議ら公明党茨城県議会議員会(代表:足立寛作県議・土浦市選出)は、小美玉市の美野里菜園を訪ね、岩松茂久社長より施設の概要と意見交換、施設の視察を行いました。この現地調査には、田村けい子県議(つくば市選出)、たかさき進県議(水戸市選出)ならびに県県央農林事務所の幹部職員も同行しました。
美野里菜園は、ケチャップで有名な大手食品メーカー「カゴメ」から支援を受け、内外の最新技術を駆使した新しいトマト栽培に取り組んでいる農業生産法人です。安全安心な質の高いトマト栽培を目指し、オランダからトマトのロックウール水耕栽培(養液栽培)技術を導入し、平成11年3月に創業しました。19ヘクタールの敷地に、1万3177平方メートルの温室が温室が建てられ、一年中新鮮なトマトの生産が行われています。
カゴメは、直接、農業生産に参入することによって成果を上げてきました。カゴメの戦略はトマトを中心とする農産物で100億円の販売目標を設定して、施設トマトのナショナルブランド「こくみトマト」を確立することを目指しています。高い品質を誇り、安定した生産量を提供することで、量販店の小売価格や納品価格を維持し、農業に工業的な生産管理や販売管理の要素を具体的に組み込んだシステムを作り上げました。
カゴメの経営体の支援・育成の戦略では、20~50aの小規模生産者は、伝統的家族経営や雇用型家族経営で全量購入の契約生産方式で対応しています。2~3ヘクタール規模では補助金の活用による農業生産法人の育成を図っています。さらにそれより大規模な10~20ヘクタール規模であれば、自前の直営生産や他企業との共同出資による大規模経営を展開しています。
美野里菜園は、この3類型の第2のカテゴリーで、最も早く立ち上がった先駆的な農業生産法人です。社長を務める岩松氏は地元運輸・倉庫業の経営者でもあり、古くから物流部門でカゴメ本社との取引があったために、農業への進出に対してオファーがあったとのことでした。約5億円を投資し、コンピューターで温度、湿度、明るさが管理された鉄骨温室内で、ロックウールの養液栽培による長期栽培を行っています。初年度は販売目標の2分1程度であったが、増収が可能となり、3年度で90%,4年度以降で軌道に乗り、カゴメの戦略の先鞭をつけました。
美野里菜園を訪れると、まずその圧倒的な温室のスケールに圧倒されます。トマトの木は3.5メートルの高さの誘引線に架けられる形で生長し続けます。1年間で15メートル程度生長しますが、伸びるの従って誘引線を横に移動させ、常にトマトの実が下の方に実り続けるように工夫されています。特殊な養液での水耕栽培ですので連作障害などは全く起こりません。外界と遮蔽されていますので、病害虫の被害も最小限で抑えることができます。
8月のお盆明けに苗木をロックウールに植え、10月中旬からトマトの収穫が始まります。次の年の7月頃まで、約10ヶ月間収穫が続きます。
温室内の作業は、徹底的に効率的に行われおり、高所での作業には電動の作業台車や引く姿勢での作業疲労を軽減するための移動椅子などが活用されていました。温度管理は、環境に優しいLPガスによる暖房で行われており、二酸化炭素の排出を抑える取り組みが実行されていました。
今松社長との質疑応答・意見交換では、暖房費の問題が話題となりました。昨年は、LPGが世界的な燃料高の中で高騰し、燃料費が生産コストの2割を占めるまでになったことが報告されました。また、冬場の日照不足も指摘され、できればLEDによる照明の低コスト化と光量増加を図りたいとの意向が聞かれました。さらに、今後は「植物工場」形式の農業生産に拍車がかかるだろうとの見解が示され、地域や行政をあげての協働の仕組み作りが必要だと強調されました。
参考:カゴメの新鮮トマトのHP