7月5日、東京電力福島第1原子力発電所事故を検証する国会の事故調査委員会(委員長=黒川清・元日本学術会議会長)が、調査報告書を衆参両院議長に提出しました。国会事故調は昨年12月、民間人による独立した調査機関として、公明党の強力なリードで国会に設置されました。こうした調査機関は現憲法下で初の試みです。報告書では、原発事故は「自然災害」ではなく「あきらかに人災」であるとし、政府や東電の対応を批判しました。
原発事故は「明らかに人災」と結論
「福島原子力発電所事故は終わっていない」との黒川委員長の言葉で始まる約640ページの報告書では、事故前の福島第1原発は地震や津波に耐えられる保証がない脆弱な状態だったとの推定を示し、事前の対策を施していなかったと指摘。「事故は『自然災害』ではなくあきらかに『人災』」と結論付けました。
事故発生後の緊急時対応については、「官邸、規制当局、東電経営陣には、その準備も心構えもなく、その結果、被害拡大を防ぐことはできなかった」と強調。とりわけ、菅直人首相(当時)らの初動対応について、「発災直後の最も重要な時間帯に、緊急事態宣言を速やかに出すことができなかった」と指摘。官邸による発電所の現場への直接的な介入について、「指揮命令系統の混乱を拡大する結果となった」と厳しく批判しました。
さらに、避難指示をめぐって住民が混乱した根底の要因として、「これまでの規制当局の原子力防災対策への怠慢と、当時の官邸、規制当局の危機管理意識の低さ」を挙げました。
報告書では、調査・検証の結論を踏まえ、(1)国会に原子力規制当局を監視する常設委員会を設置する(2)被災住民の長期にわたる健康不安などに対し政府の責任で早急に対応する(3)廃炉の道筋など報告書で扱わなかったテーマを調査・審議する民間の専門家による独立調査機関を国会に設置する―など7項目を提言しています。
国会事故調は昨年12月、政府から独立した委員会として発足。菅前首相や東電の勝俣恒久前会長、清水正孝元社長ら計38人を参考人聴取したほか、延べ約1160人を非公開で聴取。被災住民や東電職員らにアンケートを実施し、約1万3000人から回答を得ました。また、福島県内での3回のタウンミーティングで住民の意見も聴取しました。
国会事故調について公明党は、山口那津男代表が昨年5月、第三者による調査機関の国会設置を他党に先駆けて提案し、党内に検討プロジェクトチーム(PT)を設置。与野党の合意形成をリードし、9月、設置のための法律を成立させました。
報告書の公表を受け、公明党PT座長の遠藤乙彦衆院議員は、「今回の報告書は、党派性がなく独立した専門家らによる調査・検証の結晶だ。次の段階として、国会議員による調査や審議を行う方向で各党がすでに大筋合意している。報告書を事故の再発防止や今後の政策立案などに生かす枠組みを、まず具体化させたい」と語っています。
参考:国会事故調査委員会のHP