9月12日、茨城県議会農林水産委員会が開かれ、井手よしひろ県議は、農業分野に関する女性の活躍推進について質問しました。
女性就農者が仕事や生活の中で培った知恵や発想を、企業の新たな商品やサービス・情報に結びつけることで、農業の持つ魅力や可能性を引き出そうというユニークな試みが、最近話題になっています。
この「農業女子プロジェクト」は、農水省が音頭を取り2013年11月にスタート。農機具メーカーやアパレル、化粧品、自動車、ホテル、旅行会社など9社が参加し、全国の女性農業者と個別プロジェクトを立ち上げ、女性ならではの視点やアイデアを引き出す作業が進行中です。
「農作業に使う軽トラックはなぜ白ばかり?」――自動車メーカーは、こうした女性の意見を積極的に取り入れ、個性的でおしゃれな軽トラの開発で新規需要と話題づくりを図っています。アウトドア用品を扱うある会社は、これまで地味で目立たなかった農作業着に着目。プロジェクトに参加する女性からアドバイスを受けながら、カラフルで動きやすく使いやすい商品開発を進め、その第一号が発売されています。
発足当初11人だったメンバーは、北海道から九州まで約70人に増加。インターネットなどを通じて、活発に意見交換や情報発信を行い、農業の楽しさとともに自らの可能性を広げています。
茨城県からも、永田順子さん(永田フーズ)、伏見友季さん(久松農園)、和知則子さん(ポコアポコ・ファーム)の3人が登録されています。(農業女子メンバー紹介)
販売面での工夫も、女性の視点が非常に重要です。日常の買い物で、妻が意思決定する割合は7割強です。食の分野ではその割合がさらに高まっています。
農産物は、流通しやすいよう品質やサイズなどで規格化し出荷されることが多いため、消費者の感覚、女性の視点とズレが生じてしまっています。
岡山にあるブドウ農家では、思い通りに実らなかった房からブドウを取って粒にし、何品種か混ぜてパッケージ化して売り出したら、「いろいろな味が楽しめる」と人気が出ました。コメは精米したてが一番おいしいが、大袋での販売が当たり前で鮮度や利便性は二の次。そこで、1合、2合の小分け包装にして売り出したところ大ヒットしました。まさに女性の視点から、「買いたくなるもの」を商品化した事例です。
昨年の農業就業人口は約239万人。女性は約121万人と半数を超えます。しかし、日常的に農業に携わる基幹的農業従事者は44%にとどまっています。耕作放棄地は、ここ30年間で3.2倍に増え、滋賀県とほぼ同じ面積の約40万ヘクタールに達しています。その要因の一つは、土地持ち非農家の増大、つまり後継者が育っていないことにある。人材の確保、特に女性の育成が急務です。
女性が主体的に農業に携わると、農産物の販売金額が増加するというデータもあります。年間の販売金額が300万円未満の農家・農業団体では、女性の従事率は4割ですが、2000万~5000万円を売り上げるところでは、9割を超しています。農産物の加工や観光農園、輸出など、経営の多角化を進める農家の7割以上でも、女性の活躍が目立っているのです。
1992年以降、農村地域の女性の地位向上と収入の獲得に向けて、生活改善普及員らが家族経営協定締結や起業支援を推進し、女性の経済活動に対する理解を進めてきました。女性には自分の所得が増える喜びもあり、経営の意思決定に携わるケースが増え、経営分析や会計などの講座に参加し経営の経理を担当する人も多くなっているのも事実です。
政府は昨年末、今後10年間で農業・農村全体の所得倍増をめざす方針を示しています。その実現のカギを握るのは、女性であると強調したいと思います。
井手県議は、委員会質疑のまとめとして鈴木農林水産部長に、来年度予算には、「いばらき農業女子」を具体的に支援するプロジェクトを新規に立ち上げるよう訴えました。鈴木部長は「橋本知事も『女性が輝く地域づくり』を標榜しており、来年度は農業分野でも新たな取組を具体化したい」と応えました。
<参考>農林水産省「農業女子プロジェクト」