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ひたみち日記

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世論“ヨロン”と“セロン”を考える

管理者 2025年1月10日

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 新しい年が明け、各団体の新春の集いに参加する機会があります。多くの方と挨拶する中で、「103万円の壁」「ガソリン税見直し」の話題に及ぶことがあります。
 そしてその多くが、物価高やガソリン価格の高騰への不満であり、その対策として減税を求める声が高まっています。
 残念ながら、その中には“財源”に関する話題は全くありません。
 衆院選の結果を個人的に振り返るなかで、「世論」ということばを、今一度考えてみました。

 民主政治は「世論」に基づく政治だと言われます。たとえば、衆議院が解散される際に「民意を問う」という言葉が使われるように、政治の正当性や根拠が世論にあるとされるのです。今日の政治を論じるうえで、世論に触れずに語ることは不可能と言えるでしょう。しかしながら、この「世論」という言葉が持つ重要性の自明さに反して、その定義や理解は曖昧であり、多義的で、議論の対象になりがちです。
 世論をどのように捉えるかは識者によっても大きな隔たりがあります。ある人は世論を「個々人の意見の集積」として捉える一方で、他の人は世論を「誰によって、どのように形成され、どのような機能を果たすのか」という視点で捉えます。この違いは、それぞれの観点や研究対象の文脈によって生じる自然なものではありますが、さらに世論の歴史的・社会的背景の違いによっても混乱が生じています。

 日本語における「世論」という言葉には、「セロン(セイロン)」と「ヨロン」という二つの異なる読み方があり、その違いは単なる読み方の問題にとどまりません。それぞれの読み方には、異なる歴史的背景と社会的文脈があり、世論という概念そのものの理解にも影響を及ぼしています。平成15年度に文化庁が行った世論調査では「よろん」と読む人が73.8%、「せろん」と読む人が18.9%と、「よろん」の方が浸透していることが分かります。本来は「セロン」と読むのが正しいとされますが、戦後の教育やマスメディアの影響で、「ヨロン」という読み方が広まりました。


 この読み方の変化は、1946年に毎日新聞が「輿論」を「世論」と書き換えて使用し始めたことに端を発しています。この結果、「セロン」と「ヨロン」という異なる概念が一つの言葉で表現されるようになり、世論という言葉の理解が混乱を招いています。

 「セロン」と「ヨロン」の違いを、歴史的背景も含めて対比しつつ考えてみます。
 「ヨロン」という読み方の起源は、19世紀後半から20世紀初頭に日本で用いられた「輿論」という言葉にさかのぼります。「輿論」の「輿(よ)」は「多くの人々が支える」という意味を持ち、public opinionの訳語として採用されました。この「輿論(ヨロン)」は、教養と理性を備えた公衆(エリート層や知識人)によって形成された意見を指し、近代民主主義の理念である「公共の意見」を象徴していました。
 この時代の「ヨロン」は、公共問題に対する理性的で合理的な議論を基盤としており、政治権力を監視し、公共の利益を実現するための手段として機能しました。特に新聞や雑誌といったメディアが、議論の場を提供し、意見を収集・集約する重要な役割を担っていました。「ヨロン」としての世論は、公衆による合意形成の象徴であり、public opinionの日本的表現として定着していきました。

 一方で、「ヨロン」という読み方が広まったのは、第二次世界大戦後の日本社会における変化がきっかけです。特に1946年(昭和21年)以降、毎日新聞が「輿論」を「世論」と書き換えて使用し始めたことで、「ヨロン」という読み方が広がりました。戦後の社会では、大衆社会化が進み、政治の主役がエリート層(公衆)から一般大衆へと移り変わりました。この大衆社会における「ヨロン」は、感情的で情動的な意見を集積したものとして捉えられます。
 「ヨロン」は、popular sentiments、つまり「民衆感情」としての側面を強調するもので、理性的であるよりも、感情的・情動的で、多数者の意見が政治に影響を与える形を取る傾向があります。この「ヨロン」の形成においては、SNSやテレビなどの大衆メディアが大きな役割を果たしており、情報が迅速かつ広範に伝わる中で、感情的な意見が優勢となる状況を作り出しています。

■「セロン」と「ヨロン」の共通点と違い
 「セロン」と「ヨロン」は、どちらも「世論」として表現されていますが、その意味するところは大きく異なります。「ヨロン」は理性的で公共性の高い意見を意味し、政治に対して健全な監視機能を果たす役割を担っていました。一方で、「セロン」は大衆の感情的な意見を反映するものであり、感情や情動による影響が強く、多数者の意見が優先される傾向があります。
 このような違いがあるにもかかわらず、両者が「世論」という一つの言葉で表現されることが混乱を引き起こしています。特に1946年以降、毎日新聞をはじめとするメディアが「世論」という表記を一貫して使い始めたことで、概念の境界が曖昧になり、理解が難しくなりました。
 現代の民主主義において、「ヨロン」としての理性的な意見がますます失われつつあることは大きな課題です。SNSやインターネットの普及により、「セロン」としての感情的な意見が瞬時に拡散し、それが政治を動かす大きな力となっています。このような状況では、多数者の意見が優先される一方で、少数者の意見が埋没し、公共性が損なわれるリスクが高まります。
 しかし、だからといって「セロン」を否定するのではなく、その特性を理解しつつ、「ヨロン」とのバランスを取ることが重要です。理性的で公共性を重視する「ヨロン」を復権させるためには、公共問題に関する冷静で建設的な議論を促進し、少数意見を尊重する文化を育む努力が求められます。
 「セロン」と「ヨロン」という二つの読み方は、日本の民主主義の歴史的変遷と社会的な変化を象徴しています。これらの違いを正しく理解し、それぞれの特性を適切に活かすことが、健全な民主政治の実現につながるでしょう。世論という言葉が持つ深い意味を再評価し、理性的でバランスの取れた政治を目指すことが、私たちが今すべき課題だと思います。

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井手よしひろです。 茨城県の県政情報、 地元のローカルな話題を 発信しています。 6期24年にわたり 茨城県議会議員を務めました。
一般社団法人地方創生戦略研究所
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master@y-ide.com

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